
珠洲市では、2005年に「のと鉄道能登線」が廃止され、その後、北陸鉄道グループによる転換バスが運行を引き継ぎました。しかし、モータリゼーションの進行と人口減少により利用者数が減少し、路線バスの一部廃止や市営バスの導入など、公共交通網の再編が進められてきました。
こうした背景の中で、奥能登地区全体では、高齢化が進みバス運転手の確保が困難となっており、さらに民間バス路線を市営に完全移行した場合、市の財政負担が約1.4倍に増加するとの試算が出されています。珠洲市は、市が主体となり責任を持つことで、乗車無償化を実施し、運行コストを削減しました。この無償化により運行費用が抑制され、「二種免許不要化」によって運転手の確保が容易になり、柔軟なルート設定が可能となりました。
2019年と2020年に実施された無償化の実証実験では、車両サイズの適正化やデマンドタクシー運行の有効性が検証され、利用者数が60%増加し、市民の外出機会が大幅に向上しました。その成果を踏まえ、2022年3月28日には「すずバス」として無償運行を開始しました。このバスは小中高生の通学や市民の通院・買い物の手段として広く利用され、令和4年度には64,802人が利用するなど、市民の生活を支える重要な足となっています。
しかし、今回の震災では、所有するマイクロバス5台のうち2台が電装系の故障により使用不能となり、運行の継続に課題が生じています。国交省を通じ、日本自動車工業会から2台のマイクロバスが無償貸与されましたが、なお一部地域ではバスが運行しておらず、瓦礫や起伏のある危険な道路を自転車で通学している小中高生がいます。このような状況を改善するため、今回の支援金で新たなマイクロバスの確保に活用させて頂きました。
(2024/11/28撮影)




